散文詩


SHE

 

彼女の名前はなんて言ったか

僕は忘れてしまった

遠い高校生の話だから

僕と君は校庭の中庭に座っていた

そしてそこでバナナオレを飲んでいた

その光景がずっと忘れられない

君はその時ゴールデンデニッシュを食べていたね

そしてそれを一切れちぎって僕にくれた

彼女の名前はなんだったか

早生まれの僕より一歳年上だった

僕は彼女のことが好きだった

たしか、苗字はN

下の名前はなんだったか

どうしても思い出せない

なぜなら

僕は彼女とは一度もしゃべらなかったから

ただ遠くから見ていた

美しい君のことを

君の関節が動くのを見ていた

体操着の中で

僕はあの中庭で

僕は一人で座っていた

雨粒が空から落ちてきた

僕は一人だった

遠い高校生の話だから

僕には思い出せない

ただ君は美しかった

 

2017.7.14


 

朝起きると僕は顔を洗う

歯を磨く

走る

帰ってきたら風呂に入る

キッチンには君がいて卵を焼いている

僕はひとりぼっちだ

全くのひとりぼっちだ

僕はいつも温かい家庭を想像している

そして幻想の中の君に手を伸ばす

テーブルの上のiPhoneが鳴った

今日の学校は休みになりました

死んでいた猫が校庭に埋められていたからです

僕はそんな本を読んでいた

温泉の中の図書室で

僕は静かに本を読む

救急車は来ない

猫はすでに潰されてしまった

僕の中に悲鳴が響き渡る

彼は僕だった

終わらない悪夢が鳴り止まない

電話が鳴った

 

そこで目が覚めた

キッチンでは君が卵を焼いている

道では猫がニャアと言いました

僕は目覚まし時計を止めた

さあ今日も一日が始まる

僕は顔を洗った

僕は息を止めた

そして吐き出した

素早く

 

2017.7.14